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補助金申請を難しくしている『賃金引上げ計画』についての考察

  • MORI KENICHIRO
  • 1月20日
  • 読了時間: 6分

東京都新宿区の補助金申請、ビザ申請(在留資格許可申請)、産業廃棄物許可申請、建設業許可申請、に強いライジングサン行政書士事務所代表の森憲一郎です。


今回のブログテーマは、「補助金申請を難しくしている『賃金引上げ計画』についての考察」です。



補助金申請のハードルが年々上がっていると感じる経営者の方は多いのではないでしょうか。特に、近年の公募でほぼ必須、あるいは強力な加点要素となっているのが「賃金引上げ計画(賃上げ計画)」の策定です。

「給料を上げればいいだけでしょ?」と軽く考えていると、採択後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。本記事では、補助金申請を難しくしている「賃上げ計画」の正体とその困難さについて、具体的な補助金を例に挙げながら深掘りしていきます。


なぜ「賃上げ計画」はこれほどまでに難しいのか?

補助金は、かつては「新しい機械を買うための資金調達」という側面が強かったのですが、現在は「賃上げを実現するための原資」という性格が強まっています。国や自治体は、補助金を通じて企業の生産性を高め、その果実を従業員に還元することを求めているのです。

しかし、経営者にとってこの計画作成には3つの大きな壁が立ちはだかります。

  1. 「努力目標」ではなく「契約」であること

    多くの補助金において、賃上げ計画は単なる目標ではありません。計画が未達成の場合、補助金の返還を求められるケースが増えています。

  2. 人件費という「固定費」を押し上げるこ

    設備投資は一回限りの支出ですが、賃上げは永続的な固定費の増加を意味します。補助事業が終了した後も、上がった給料を下げ続けることは法的に困難です。

  3. 計算の複雑さと「給与支給総額」の定義

    「基本給」だけを考えれば良いわけではありません。賞与や各種手当、役員報酬まで含めた「総額」でのコントロールが求められます。


事例1:中小企業成長加速化補助金(中堅企業・中小企業への成長加速化支援)

まず、非常にハードルが高い例として、中小企業庁が実施する「中小企業成長加速化補助金」を挙げます。

この補助金は、売上高10億円以上の企業が100億円を目指す「100億宣言」を前提としたもので、投資規模も1億円以上と大規模です。その分、賃上げ要件も極めてシビアです。

困難なポイント:5年間の継続的なコミットメント

この補助金では、事業実施期間終了後から3年間にわたって、以下のいずれかを満たす計画を立てる必要があります。

  • 給与支給総額を年平均成長率で一定以上(例:1.5%〜3%以上)増加させる。

  • 一人当たり給与支給総額を年平均成長率で一定以上増加させる。


どこが「難しい」のか?

「年平均成長率」というのが厄介です。1年だけ頑張れば良いのではなく、3〜5年という長期スパンで右肩上がりの人件費増を約束しなければなりません。もし成長が鈍化し、売上が目標に届かなかったとしても、賃上げの約束だけが残り、未達成なら未達成率に応じた補助金返還のリスクがつきまといます。いわば「会社の将来を賭けた契約」に近い重みがあるのです。


事例2:東京都「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」

次に、都内の中小企業に馴染み深い東京都(東京都中小企業振興公社)の助成金を例に見てみましょう。この「一般コース」では、賃上げ計画を策定することで助成率がアップ(2/3 → 3/4など)する仕組みになっています。


困難なポイント:短期間での確実な「2%以上」の積み上げ

東京都のこの事業では、以下の要件を満たす必要があります。

  • 給与支給総額を2%以上増加させること(基準日から12ヶ月間の実績を比較)。

  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。


どこが「難しい」のか?

一見「2%ならいける」と思うかもしれませんが、この計画には「パート・アルバイト」も含まれます。また、助成金の支払いが完了した翌月から12ヶ月間という、非常に短いスパンで確実に「実績」を出さなければなりません。

さらに、東京都の助成金は「支給総額」の計算が非常に厳密です。決算書ベースでの確認が行われるため、退職者が出た場合や、残業代が減った場合など、意図しない理由で総額が下がってしまうと「計画未達成」とみなされるリスクがあります。助成率を上げるために計画を組んだものの、達成のために無理な昇給を行い、結果的に助成額以上の人件費負担を背負うという「本末転倒」な事態になりやすいのです。


賃上げ計画を作成する際の「3つの鉄則」

これらの困難を乗り越え、安全に補助金を活用するためには、以下の視点が不可欠です。

1. 「役員報酬」と「新規採用」をシミュレーションに組み込む

給与支給総額は、既存社員の昇給だけで達成する必要はありません。成長のための「新規採用」による人件費増もカウントされます。また、多くの制度では役員報酬も給与支給総額に含まれるため、最終的な調整弁として考慮しておくことがリスクヘッジになります。

2. 「付加価値額」との連動を確認する

賃上げの原資は「利益(付加価値)」です。補助金を活用した設備導入によって、どれだけ生産性が向上し、どれだけの利益が上積みされるのか。その利益の中から無理なく支払える範囲で賃上げを設定しなければ、会社の首を絞めることになります。

3. 「地域別最低賃金」の改定を先読みする

最低賃金は毎年10月に改定されます。計画期間中に最低賃金が大幅に上がった場合、自社の「最低賃金+30円」という約束が守れなくなる可能性があります。あらかじめ政府の動向を読み、余裕を持った設定が必要です。


結論:補助金は「賃上げの覚悟」を買うチケット

「賃上げ計画」の策定は、もはや事務的な書類作りではありません。それは、「人件費という固定費を上げながらも、それ以上の利益を出す構造を作れるか」という、経営の本質を問うリトマス試験紙です。


安易な気持ちで「最大額をもらいたいから高い賃上げ率で書こう」とするのは非常に危険です。採択後の数年間にわたる資金繰りと、従業員のモチベーション、そして不測の事態(不況)への備えをすべて含めた「経営戦略」として、計画を練り上げてください。


行政書士に依頼することで、書類作成の負担軽減、申請不備による手戻りの防止、そしてスムーズな許可取得が期待できます。


許可申請でお困りの方は、まずは専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。

上記お問合せフォームからお気軽にご相談ください!


(あとがき)

当事務所では、補助金の採択可能性を申請前に事前診断させていただいております。事業によっては補助金の対象にならないものもあり、いわゆるノーチャンス事業にあてはまっていないか、または採択可能性が高い事業なのかなど、申請前に診断することで、無駄な時間・コストを省くことができます。遠慮なくご相談ください。懇切丁寧にご説明させていただきます。


 
 
 

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