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日本国における産業廃棄物排出量の変遷を過去30年遡る!〜循環型社会への道のり〜

  • MORI KENICHIRO
  • 11月21日
  • 読了時間: 7分

東京都新宿区の産業廃棄物許可申請、在留資格許可申請、補助金、に強いライジングサン行政書士事務所代表の森憲一郎です。


今回のブログテーマは、日本国における産業廃棄物排出量の変遷を過去30年遡る!〜循環型社会への道のり〜」です。


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日本の高度経済成長を支えてきた産業活動は、その一方で産業廃棄物という避けられない課題を生み出してきました。過去30年を遡り、統計データに基づきこの産業廃棄物排出量がどのように変化し、それが日本の循環型社会への取り組みとどのように結びついているのかを深掘りします。

環境省のデータに基づくと、日本の産業廃棄物排出量は、近年では年間約4億トン前後で推移しており、大きな増減は見られません。しかし、この数字の裏には、排出構造の変化、処理技術の進歩、そして国を挙げた法制度と目標設定の歴史が隠されています。


総排出量の推移と構造的な変化(過去30年)


産業廃棄物の総排出量は、景気変動や産業構造の変化に影響を受けながらも、長期的な視点で見ると安定化の傾向が見られます。排出量は、1990年代には4億トンを超える年も多くありましたが、2000年代以降は概ね4億トン前後で推移し、近年は3億7千万トン台で推移しています(例:令和3年度3.76億トン、令和4年度3.74億トン)。

この総排出量を構成する主要な品目や業種は、時代とともに変化してきました。


1. 品目別排出量の変遷


産業廃棄物は20種類に分類されますが、排出量の大部分を占める上位3品目の構成比は、長期間にわたって非常に重要です。

順位

品目

傾向と背景

1位

汚泥

常に最も多い品目。建設汚泥や工場・事業場からの排水処理に伴い発生。近年は全体の約44%を占めるなど、その割合は高い水準で安定。

2位

動物のふん尿

畜産業の規模拡大・集約化に伴い排出量が増加傾向にあったが、近年は微増・横ばい。家畜排泄物の資源化(堆肥化、メタン発酵など)が進められている。

3位

がれき類

建設業から排出され、排出量は建設活動の動向に連動。建設リサイクル法の施行(2000年)以降、分別解体や再生利用が義務付けられたことで、排出されるがれき類自体の再資源化率が高まっている。

廃プラスチック類などの排出量は、上位3品目に比べると少ないものの、海洋プラスチック問題などで注目され、その処理方法やリサイクル率向上の重要性が増しています。


2. 業種別排出量の変遷


産業廃棄物の排出源を業種別に見ると、上位5業種で総排出量の8割以上を占めるという構造は、長年変わっていません。

  • 農業・林業(主に動物のふん尿)

  • 建設業(主にがれき類、汚泥)

  • 電気・ガス・熱供給・水道業

  • 製造業(パルプ・紙・紙加工品製造業、鉄鋼業など)

特に建設業は、がれき類や汚泥の多さから常に大きな割合を占めてきました。製造業の中では、重化学工業や大量生産型の産業の排出量が目立ちますが、産業構造の転換や生産効率化により、その比率には変化が見られます。


処理状況の変化:最終処分量の激減


過去30年間の産業廃棄物に関する最も劇的な変化は、排出量そのものの増減よりも、その処理方法の変遷、特に最終処分量の激減にあります。これは、日本が「廃棄物の適正処理」から「資源の循環的な利用」へと政策の軸足を移してきたことの明確な成果と言えます。


最終処分量の驚異的な減少


1990年代後半、最終処分場(埋立地)の残余容量の逼迫が深刻な社会問題となり、「廃棄物の減量化・リサイクル」が喫緊の課題となりました。

統計によると、2000年度には約5,600万トンであった産業廃棄物の最終処分量は、政府の目標設定と各種法制度の強化により、劇的に減少しました。

  • 2020年度:約1,281万トン

  • 2021年度:約1,234万トン

  • 2022年度:約1,250万トン

実に2000年度から約78%も減少し、現在は1,300万トン以下で推移しています。これは、以下の要因によって達成されました。

  1. 循環型社会形成推進基本法の制定(2000年):3R(リデュース・リユース・リサイクル)の優先順位を明確化し、リサイクルを社会の基本原則と位置づけた。

  2. 個別リサイクル法の整備:建設リサイクル法、家電リサイクル法、容器包装リサイクル法など、排出者に責任を負わせる法律が整備され、リサイクルが義務化された。

  3. 減量化技術と中間処理施設の進化:焼却、破砕、脱水などの中間処理技術が高度化し、廃棄物の体積・重量が大幅に減量されるようになりました。また、中間処理施設数も増加し、処理能力が向上しました。

この最終処分量の減少は、資源循環型社会への転換を示す最も重要な指標であり、世界的に見ても高く評価されるべき成果です。


法整備と政策目標の役割


過去30年の変遷を語る上で、日本の廃棄物政策の進化は不可欠です。


1. 1990年代後半の危機と法制度の基盤


1990年代後半、最終処分場不足と不法投棄の横行という二つの危機が、産業廃棄物問題の深刻さを浮き彫りにしました。これに対処するため、1997年の廃棄物処理法改正では、罰則強化や排出事業者の責任明確化が行われました。


2. 2000年代:循環型社会へのパラダイムシフト


2000年に制定された循環型社会形成推進基本法は、従来の「処理」中心の考え方から、「資源の有効利用」を目的とする「循環」中心の考え方へと、日本の廃棄物政策を根本的に転換させました。

この法律に基づき、政府は「物質フロー」の概念を導入し、以下の目標を設定しました。

  • 資源生産性(GDP/天然資源等投入量)の向上

  • 循環利用率(循環利用量/天然資源等投入量)の向上

  • 最終処分量の削減(2000年度比で大幅削減)

これらの目標が、企業のリサイクルへの取り組みや技術開発を強力に後押ししました。


今後の課題と持続可能性


過去30年で、日本は産業廃棄物の最終処分量を大幅に削減し、資源循環システムの構築において顕著な進歩を遂げました。しかし、課題は依然として残っています。


1. 排出量の高止まり


総排出量自体は、大きな変化なく約4億トン前後で高止まりしています。これは、日本経済の規模を反映しているとも言えますが、根本的なリデュース(発生抑制)の取り組みは、まだ十分とは言えません。


2. 複雑化する廃棄物と新たな技術


近年のデジタル化や新素材の開発により、複合素材有害物質を含む廃棄物が増加しています。これらの複雑な廃棄物に対して、安全かつ効率的な処理・リサイクル技術の開発が求められています。


3. 2030年の最終処分量目標達成に向けて


政府は、さらなる最終処分量の削減を目指しており、2030年度には約1,100万トンにまで削減することを目標としています。この目標達成には、排出事業者と処理業者が一体となった、より高度なリサイクル技術の導入と、排出抑制への意識改革が不可欠です。


まとめ


日本における産業廃棄物排出量の変遷は、単なる数字の変化以上の意味を持っています。それは、公害の克服環境危機への対応、そして持続可能な社会への価値観の転換という、日本の歩みそのものを映し出しています。

排出量の安定化と最終処分量の劇的な減少は大きな成果ですが、真の循環型社会の実現には、産業界全体で「廃棄物を出さない」仕組みを追求し続ける必要があります。未来に向けて、この30年の経験と統計データを教訓として、さらなるイノベーションと取り組みが期待されます。


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